差額ベッド代トラブルを避けるために知っておきたい基本知識

今回は差額ベッド代についてお話しします。

保険相談の際には必ず「差額ベッド代」のついての話を聞くと思いますが、
実は、差額ベッド代が原因で病院とトラブルになる場合があるって聞いたことありますか?

差額ベッド代とは個部屋や少人数の部屋(2人〜4人)に入院した時にかかる宿泊費のことで、1日単位でお金が発生します。

(入院日数は0時を起点として考えるので、夜23時に緊急入院して翌朝9時に退院したとしても2日入院したことになります)

入院するとなると真っ先に医療費の心配をされると思いますが、実は医療費は皆さんが想像してるほど高額になることはありません。

ここでは詳しい説明は省きますが、私たちは健康保険と言われる国の医療保険に強制加入しているので、どんなに医療費が高額になったとしても一定額以上は負担しなくてもいいという制度があります。

しかし、差額ベッド代に関しては医療費扱いではないため全額負担しなければなりません。
ですので、入院をしたら医療費負担よりも差額ベッド代の負担のほうが大きかったなんていう方もいらっしゃいます。

しかし、実は個部屋に入院したとしても差額ベッド代は払わなくてもいい場合があるんです。

今回の記事では、不要な差額ベッド代を払わないために必要な基本知識や、保険加入する際に考えたい差額ベッド代の考え方についてお話ししていきます。

目次

差額ベッド代の全国平均

まず最初に、差額ベッド代の全国平均は以下のようになっています。

4人部屋から2人部屋であればおよそ3000円程度ですが、1人部屋(個部屋)になると一気に高くなってますね。

しかもこれは全国平均です。都道府県によっては信じられないくらい大きな差があります。

東京は有名な病院が多くあり運営経費もかさむので、個室で1日19,770円と全国平均の倍以上にもなっているんです
反対に、最も安いのは秋田県で個室の平均は3,538円。
東京の5分の1以下。
都道府県によってこんなに差があるのは驚きですよね。

病院のHPには差額ベッド代を明記している病院もあれば記載がない病院もあります。

ご自身の都道府県の相場はどれくらいなのか、こちらを参考にしてみてください。


差額ベッド代の支払いが不要なケース

実は、以下のような場合は少人数部屋や個室に入院したとしても差額ベッド代がかからない場合があります。

・大部屋の空き部屋がなく、病因都合で個部屋になった場合
(緊急入院等で大部屋が空いておらず、個部屋しか空いていなかった)

・患者の治療上の必要により個部屋に入院させる場合
(免疫力が低下し、感染症にかかるおそれのある患者など)病棟管理の必要性等から個部屋に入院させた場合
(感染症の患者で、他の患者への院内感染を防止するため)


簡単にいうと、患者さんが希望しない限りは支払う必要がないということですね。

さらに、病院側が患者さんに差額ベッド代を請求するためには「同意書」が必要です。
厚生労働省の通知では、同意書がなければ、差額ベッド代を請求してはならないと示されています。

差額ベッド代のトラブル

ただ、この同意書を巡って患者さんと病院とでトラブルになることがあるんです。

例えば、入院するとなると様々な書類が必要になるのですが、その書類の中に同意書が紛れ込んでいて気付かずサインしてしまったということが起こります。

入院時に必要な書類例

  • 問診票(連絡先や日常生活等確認の書類)
  • 手術、検査等同意書(お渡しした方のみ)
  • 入院誓約書 ※押印必要です
  • 体温計借用確認書 ※押印必要です
  • 入院履歴に関する確認書
  • アレルギー歴問診票


こんなにたくさんの書類があればさすがに見落としてしまうことだってありますね。
緊急入院だったりで気が動転している場合なんかは、一つひとつ細かく確認せずにサインしてしまう方も多いんじゃないかと思います。

そして、病院によっては同意書に部屋の第一希望から第三希望まで書く場合もあり、第一希望で「大部屋」を希望し、第二、第三希望に少人数部屋を記載した場合も「希望した」とみなされて部屋代を請求されることもあります。

そこで、想定以上の支払いが必要になり、医療相談窓口へ問い合わせする方も多いようです。

同じ部屋でも窓際だとプラス料金が発生することもあります。

自分の祖母が入院したときは4人部屋だったのですが、窓際のベッドで1日あたりプラス2000円加算されていたそうです。

トラブルの事例①


(健康保険組合連合会の電話相談窓口に寄せられた相談内容をもとに要約しています)


20年近く膠原病を患っている方が、地域でも比較的大きな病院で入退院を繰り返していたそうです。
その病院は病棟を建てかえたときから高い差額ベッド料を設定するようになりました。

予定入院であれば大部屋をお願いできるのですが、時間外の緊急入院の場合はほぼ大部屋に空きがなくく、 1日2万円ぐらいする病室に入ることも多かったようです。


毎回同意書の提出を求められるのでサインしなければいけない書類だと思って素直に提出していたのですが、ある日また緊急入院することになり、今度は「1日30,000円の病室しか空いていない」と言われました。

帰省していた娘さんが同行しており、「納得がいかない場合は同意書を出さないほうがいい」とアドバイスしてくれたので、同意書は一旦保留にしたそうなのですが、
「ともかく同意書にサインしてください。サインさえしてくだされば、2万円台に金額を下げる交渉はできますから」
と医師が頻繁に病室にやってこられ、渋々サインをせざるを得なかった。

トラブルの事例②

誤嚥性肺炎で病院に救急搬送され、3週間入院された男性の場合。

退院直前に病院から示された医療費の請求書の中に1日21,600円の差額ベッド料の請求があり、約3週間の入院なので40万円を超える高額な請求が。
すぐにナースステーションに行って確認したところ、医事課に行くように指示。

医事課では本人の筆跡による差額ベッド料の同意書が提示され、
「同意されています」と言われたのです。

この方の息子さん曰く、緊急搬送されて駆けつけたときに数枚の書類を渡され、提出した記憶があるが、その中に差額ベッド料の同意書も入っていた事は知らず、口頭での説明は一切なかったというのです。

これは僕が実際に看護師をしているお客さまから聞いた話なのですが、
同意書ついて患者様に説明しないということも全然あり得るそうなんです。

差額ベッド代のルールを患者が知らないのをいいことに、同意書にサインを求めることはあり得るという事です。

同意書にサインしてしまったら?

まず、患者さん自身が病院から設備や料金についての説明を受け「同意書」にサインした場合は、当然支払いが必要になります。

この同意書は患者さんが納得していることを示す重要な証拠です。

病院側の説明をきちんと聞かずに、あるいは同意書の内容をよく確認せずにサインしてしまった場合でも、同意書がある以上病院の説明に納得して差額ベッド室を利用したということになるので、支払わなければならないようです。

差額ベッド代を負担したくないなら、入院する前にベッド代がかからない部屋を希望していることを伝えて同意書にサインをしない、というのが基本です。

ただ、こちらが正当な理由で差額ベッド代を拒否できたとしても、こっちはあくまでも患者、相手は医者。病気を治す側治してもらう側です。

同意書を拒んだりした場合、病院スタッフとの関係が悪くなったり入院を拒否されたりするようなトラブルが発生することも現実にはあるようです。

また、他の部屋が空くのを待つ、部屋代がかからない他の病院に入院するということも選択できますが、急に入院が必要な状況での「差額ベッド室しか空きがない」という場合はそんな余裕などないので、同意を求められたら不服でも同意せざるを得ないかもしれません。
(そもそも請求しちゃいけない決まりなのでおかしな話ですけどね)

病院によっては事情を話せば差額ベッド代がかからないように、あるいはできるだけ少額ですむように配慮してくれるところもあるようです。

すぐに入院治療が必要だったり、その病院で治療を受けたいと思っていたりする場合は、経済的に差額ベッド代の負担が厳しいことや差額ベッド代がかからない部屋が空いたらすぐに移動したいことを病院側に伝えたうえで差額ベッド室への入院に同意するというのも一つの方法です。

差額ベッド代をゼロにはできなくても、できるだけ少なくする方が現実的な解決策と言えるかもしれませんね。

保険加入時の考え方

以上のことから、差額ベッド代はかかるもの、かからなかったらラッキーくらいに考えていた方がいいと私は思います。

若い方であればそこまで長く入院することはないかもしれませんが、相場は知っておいた方がいざという時に焦らずにすみます。

また、今まで入院した経験のない方だと、別に大部屋でもいいんじゃないかと思うかもしれませんが、
一度入院を経験された人に話を伺うと、今度入院するなら個部屋がいいとおっしゃる方は多いです。

特にガン経験者の方はみなさん個室を希望されるようです。

ガン治療で大事なのは、QOLの維持。
いかに生活の質を下げずに治療に専念できるかが、その後の回復に大きく関わってくる病気です。
そのためには、プライバシーを守ってくれる個部屋や少人数部屋は検討する価値があると思います。

ですので、医療保険やがん保険の保障を考える際は、医療費負担だけでなく、差額ベッド代などの目に見えない費用も考慮し、保障を作りましょう。

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